敵の強さを知るということ
敵と戦うためには、敵を知っていなければならない。これは正しい戦略の根本原則の一つである。敵を知るというのは、その欠点や弱点を知るのみでなく、またその強さをも知ることを意味している。われわれはみな、従来、この強さを軽視しがちであった。政治的神話について初めて耳にしたとき、われわれは、それがきわめて不合理でつじつまが合わず、また空想的でばかげているのを認めて、それをまじめに取り上げるように説かれても、ほとんどが承知しえなかった。いまでは、これが大きな誤りであったことは、誰の目にも明らかになった。われわれは同じ誤りを二度と繰り返してはならない。
エルンスト・カッシーラー『国家の神話』