佐藤等様
お世話になっております。
このたびはご高著を恵贈くださり、ありがとうございます。
ゆっくりと楽しみに読もうと思っていたのですが、昨日読み始めたと思ったら、もう読了しておりました。
ページをめくるのが惜しく感じるほどの清新な読書体験はひさしぶりです。
佐藤様の超人的なご努力には日頃から並々ならぬ敬意を寄せておりましたが、本書を手にしてその気持ちがなおいっそう切実な輪郭をともなって迫ってきます。
というよりも、おそらくドラッカーの偉大な実践精神が佐藤様をしてかくも有効性の高い一連の行動に駆り立てたようにも見えてくるのです。
いささか宗教臭い評言を許していただければ、ドラッカーによる荒野の呼び声を真摯に聞き、その熱をまともに肌で受け止め、真摯に応えた方としての佐藤様の実像がくっきり私の脳裏に浮かびました。
その証拠に、本書のいちばんの持ち味は、生き生きと血が通っているところです。
表情もじつに豊かです。生きた人間が生きたままに描かれています。
佐藤様はすぐれた美術品と対話するように、心を開いて一枚一枚丁寧に見て、鋭敏なところ、かけがえのないところ、卓越したところを探り当て、描ききっています。
「実践とはそのようなものなのだ」と言えばそれまでですが、一言で片付けるにはあまりにも深遠な示唆がそこにはあります。
読む者にとってはっと胸を衝く熱があるのです。
その熱を文章で再構成する。それに並大抵以上の努力が要されるのを私は知っています。少なくとも私の知るかぎり本書をのぞいて誰も成功したことのない境涯であることは確かです。
同時に、緻密で、親切で、優しい心の持ち主のみが描きうる世界でもあります。あるいは、世の片隅への思いと、傷つきやすいささやかな存在への配慮あるもののみに許される仕事でもあります。
最後に述べられている「言葉はマネジメントそのもの」、まったく同感いたします。たぶんドラッカーの言葉の使い方だけで本が何冊もあっていいのだろうと思います。
言語は社会生態そのものですから、今後力を入れる分野のリストに入れていただき、ご指導をいただけることを祈念いたします。
今後ともドラッカーや上田先生の精神を継承し、いっそういきいきと「札幌の精神」を具現化すべく、学会としても叡智を結集すべき時期と思います。
ご一緒できることを楽しみにさせていただいております。
まずは心よりの敬意をお伝えしたく、お礼と感想まで。