「二つの対立する考え方があるってわけね?」と208。
「そうだ。でもね、世の中には百二十万くらいの対立する考え方があるんだ。いや、もっと沢山かもしれない」
「殆んど誰とも友だちになんかなれないってこと?」と209。
「多分ね」と僕。「殆んど誰とも友だちになんかなれない」
それが僕の一九七〇年代におけるライフ・スタイルであった。ドストエフスキーが予言し、僕が固めた。
村上春樹『1973年のピンボール